Craftmanship

職人紹介​​

和紙職人​

経済産業大臣指定 伝統的工芸品 石州和紙 伝統工芸士
島根県浜田市三隅町在住
「かわひら」
川平勇雄さん

石州和紙×和傘のコラボレーション
技術の継承と新たな取り組みで魅力を広めたい

Q.「石州和紙」は、1989年4月、経済産業大臣から「伝統的工芸品」の指定を受けました。石州和紙の歴史や特徴を教えてください。

江戸時代、石見地方で、農業の閑散期に副業として漉いていた紙を「石州紙」(せきしゅうし・せきしゅうがみ)と呼んでいました。明治時代に石見地方で作られている紙の総称として「石州和紙」といわれるようになり、最盛期には6000軒を超える紙漉き事業者が存在していました。現在は浜田市三隅町にある4軒が、石州和紙協同組合事業者となっています。
「伝統的工芸品」に指定されている石州和紙は、漉き方や乾燥方法、使用する材料、道具などが決められており、石州和紙協同組合の検査に合格したものをいいます。大きな特徴として、紙の繊維が強いことが挙げられます。原料となる楮(こうぞ)は、甘皮ごと使用することで、繊維が絡み破れにくく強靭です。ここ三隅町には良質な楮が育つ環境があり、よい水が豊富に流れているおかげで、原料の栽培から製品加工まで一貫して行えるのも、他にはない特徴といえるでしょう。
「かわひら」では、楮は、地元産のみを使い、伝統的な製法で漉いた紙は、少し黄味がかった、優しい色合いの和紙に仕上がっています。

Q.「傘鶴」用の和紙は、どうやって完成させているのでしょうか。

原料である楮は、1年で最大3メートルくらいまで伸びる植物。1メートル位で切りそろえ、蒸してから皮を剥き、乾かし、黒皮にします。黒い外の皮を取り、薄緑色の甘皮はあえて残して煮て、ほぐす、という工程はどの和紙も同じです。
和紙の漉き方は「溜め漉き」と「流し漉き」と2通りあり、傘鶴用の和紙は溜め漉きしています。漉槽に楮と水を入れ、とろみをつけるためにトロロアオイの根から出る成分(通称:ねり)を適量加えます。他地域では外国産や化学ネリを使ったりしていますが、かわひらでは、材料は全て自然由来で、地元から調達しています。
次に、折り鶴を開いて細かく断裁された紙片を適量入れて、漉いていきます。漉いた和紙は、板に張り付けて乾かします。

Q.傘鶴用和紙を漉く難しさは。

難しいのは、紙片を加えて、目的の厚みに同じ品質の紙を漉くことです。和紙の仕上がりは0.1グラムまで正確に計量し、厚くても薄くてもダメ。しかし、漉く途中では水分を含んでいるため、厚みが計れませんから、完成するまで分からないのが難点であり、腕の見せ所でもあります。
また、ねりの量の加減に苦労しました。ねりが多いと、効きすぎて水の抜けが悪くなりますし、少ないと厚みにムラがでたり、仕上がりに影響します。
このたび、3色の折り紙の紙片を使った和紙の依頼をいただきました。2代目の父も、創業者の祖父も、和紙の傘をつくっていましたから、和傘用の和紙をつくる技術はありましたが、紙片を漉き込むのは手探り状態のところもありました。まずは小さい、賞状サイズの和紙から試し、大きいサイズへと展開していきました。

Q.傘鶴は、G7サミットでお披露目されるなど、注目されていますね。

私たちは製品を届けるのではなく、その元となる和紙を作っていますから、まずは使ってもらいたい。G7サミットで、石州和紙が使われたことを、大変誇らしく思います。
伝統的工芸品も、「売る側」「買う側」のニーズが一致するのが大事だと考えます。傘鶴の依頼は、一つのチャレンジです。傘鶴が知られ、いろんな人の目に触れることで、和紙の新たな販路につながるといいなと思っています。

Q.伝統と革新のバランスについて。

かわひらでは、化学ネリを使用しないため、安心安全で柔らかい和紙を漉くことができます。そこで考えたのが「ファーストステップシューズ」。糸も靴紐も全て和紙でできています。また、2023年1月に引退した元関脇・隠岐の海、現君ヶ浜親方の断髪式には、石州和紙を使った直筆サイン入りうちわをつくりました。
父はもともと造船業に従事したのち、三隅町に戻りました。私も、一度東京で別の仕事に従事し、15年前にUターンしたので、それぞれ外からの目も持っていると思っています。父はいち早く漉槽をモルタルからステンレス製に変え、和紙を乾かす際の板もチタン製にしました。伝統を継承しつつ、時代にあった柔軟性を持った考え方も必要だと思っています。

Q.今後は…。

このたびの傘鶴のように、異業種とのコラボはありがたいこと。期待感でいっぱいです。傘鶴から和紙が知られ、枝葉が広がって、根を張っていくといいなと心から願っています。まずは実績をつくって、私たちも積極的に情報発信をしていきたいと思います。

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